- 2025年6月14日
- 2025年6月6日
9:ADHDと心の健康:二次障害(うつ病、不安障害)との関連と向き合い方
「頑張ろうとしても空回りして、結局何もできず自己嫌悪に陥る」「周りの視線が気になり、人前で特性が出ないかいつも不安」「なぜこんなに生きづらいんだろう…」。ADHDの特性は、その人の努力不足や性格の問題ではありませんが、その特性によって生じる日常生活や社会生活での困難は、心に大きな傷をつけ、うつ病や不安障害といった二次障害を併発するリスクを非常に高めます。これらの二次障害は、ADHDの特性そのものよりも、患者さんの苦痛や生活の質を著しく低下させることが多くあります。
ADHDの特性が心の健康に与える影響は多岐にわたります。
- 慢性的なストレスと疲労: 忘れ物、ケアレスミス、時間管理の失敗、衝動的な行動による人間関係の摩擦など、ADHDの特性による困りごとが日常的に起こることで、常にストレスにさらされ、心身ともに疲弊します。この慢性的なストレスが、うつ病や不安障害の発症リスクを高めます。
- 自尊心の低下と自己肯定感の欠如: 周囲から「だらしない」「やる気がない」「協調性がない」などと否定的な評価を受けたり、自分自身でも「なぜできないんだろう」と責めたりすることで、自尊心が著しく低下し、自己肯定感が持てなくなります。これは、うつ病の主要な原因の一つとなります。
- 失敗体験の積み重ね: ADHDの特性によって、学業、仕事、人間関係などで多くの失敗を経験することがあります。これらの失敗体験が積み重なることで、「自分は何をやってもダメだ」というネガティブな自己評価を形成し、無力感や絶望感に繋がり、うつ病の発症に繋がることがあります。
- 不眠: 脳の覚醒水準の調整が苦手なADHDの特性に加え、日中のストレスや不安が、寝つきの悪さや中途覚醒といった睡眠障害を引き起こします。睡眠不足は、さらに気分の落ち込みや不安感を増強させ、うつ病や不安障害を悪化させる悪循環に陥ります。
- 不安感の増大: 失敗への恐怖、人前で特性が出てしまうことへの不安、今後の生活への漠然とした不安など、常に何らかの不安を抱えている状態(全般性不安障害)や、特定の状況(人前での発表、会議など)で強い不安を感じる(社交不安障害)ことがあります。
- 人間関係の困難と孤立: 衝動的な発言、話の割り込み、物忘れ、約束を守れないといった特性が、友人関係、家族関係、職場での人間関係に摩擦を生じさせ、孤立感を深めてしまうことで、心の健康に悪影響を及ぼします。
心療内科医である当院では、ADHDの特性そのものへのアプローチだけでなく、特性によって生じるこれらの二次障害へのケアも非常に重要視しています。患者さんの抱える困りごとを丁寧に伺い、特性を理解した上で、二次障害の治療(必要に応じて抗うつ薬や抗不安薬の検討)と、ストレス軽減や心の健康維持のためのサポートを統合的に行います。心理療法、環境調整、生活習慣の改善指導などを通して、心の状態を安定させ、自己肯定感を高める支援を行います。
また、当院独自の「サトワタッチケア」は、自律神経のバランスを整え、深いリラックス効果をもたらすことで、慢性的なストレスや不安を軽減し、不眠の改善に繋がります。これにより、うつ病や不安障害の症状を和らげ、より安定した精神状態でADHDの特性と向き合えるようサポートいたします。ADHDの特性、そしてそれに伴う心のつらさは、決して一人で抱え込むものではありません。私たちはあなたの悩みに真摯に寄り添い、共に解決策を見つけていきます。