- 2025年6月11日
- 2025年6月6日
6:ADHDと間違えられやすい病気~適切な診断の重要性~
「集中できないのはADHDだと思っていたら、実はうつ病だった」「落ち着きがないのは発達障害だと思っていたが、他の精神疾患だった…」。ADHDの症状は、他の様々な精神疾患や身体疾患と似ているため、自己判断や誤った診断に繋がってしまう可能性があります。適切な治療やサポートを受けるためには、何よりも正確な診断が不可欠です。
ADHDと間違えられやすい主な病気としては、以下のようなものが挙げられます。
- うつ病: 集中力の低下、意欲の減退、倦怠感、不眠などがADHDの不注意と似た症状として現れることがあります。しかし、うつ病は気分が落ち込むことが主症状であり、通常はADHDのような多動性や衝動性は伴いません。
- 不安障害(全般性不安障害、社交不安障害など): 常に不安感がある、そわそわして落ち着かないといった症状が、ADHDの多動性や衝動性と似ていることがあります。しかし、不安障害は特定の状況や出来事に対する強い不安が主症状であり、不注意の特性は主要ではありません。
- 双極性障害(躁うつ病): 躁状態の時に、多動性、衝動的な行動、睡眠時間の減少などがADHDの症状と似ていることがあります。しかし、双極性障害は躁状態とうつ状態を繰り返すのが特徴であり、ADHDとは病態が異なります。
- 適応障害: ストレスが原因で、集中力低下、落ち着きのなさ、衝動性などが一時的に現れることがあります。環境の変化やストレス要因が解消されれば症状も改善する点がADHDと異なります。
- 甲状腺機能亢進症: 甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで、落ち着きのなさ、イライラ、集中力の低下などが現れることがあります。動悸、発汗、体重減少などの身体症状を伴います。
- 睡眠障害: 睡眠時無呼吸症候群や不眠症などによって、日中の集中力低下、眠気、イライラなどが生じ、ADHDの不注意や多動性と似た症状に見えることがあります。
- 学習障害(LD): 特定の学習分野(読み書き、計算など)に困難がある発達障害です。ADHDの不注意と併発することもありますが、学習障害単独では注意や多動の特性は持ちません。
- 知的障害: 全体的な知的発達の遅れがある場合、集中力の困難や衝動性が現れることがあります。
これらの病気と症状が重複するため、自己判断せずに、必ず専門医の診察を受けることが不可欠です。
ADHDの診断には、患者さんの幼少期からの発達歴や現在の困りごとに関する詳細な問診が最も重要です。以下の点を詳しく伺い、総合的に判断します。
- 生育歴: 幼稚園や学校での様子、学習や生活での困難。
- 現在の生活状況: 仕事や学業での困りごと、人間関係、家事など。
- 症状の持続性: 幼少期から継続しているか、特定の状況でのみ現れるか。
- 他の精神疾患や身体疾患の有無: 鑑別診断のために、必要に応じて他の検査や専門医への紹介も行います。
- 心理検査: WAIS-IVなどの知能検査や、AQ、CAARSなどのADHD特性を評価する質問紙などを用いることもあります。
誤った診断のまま、適切なサポートを受けられないと、二次障害が悪化したり、本来の能力を発揮できなかったりする可能性があります。当院では、心療内科の専門医として、患者さんの困りごとを丁寧に伺い、正確な診断と適切なサポート方針をご提案することで、患者さんが本来の健やかな生活を取り戻せるよう全力でサポートいたします。「もしかして」と感じたら、ためらわずに専門医にご相談ください。