- 2025年6月8日
- 2025年6月6日
3:ADHDが引き起こす心と身体のSOS~二次障害:ストレス、うつ病、不安障害、そして身体症状~
「何度注意しても同じ間違いをしてしまう自分に嫌気がさす」「周りの人は簡単にできるのに、自分だけができない…と落ち込む」「集中しようとすればするほど、体が緊張して疲れてしまう」。ADHDの特性そのものが直接的に身体を蝕むわけではありませんが、その特性によって日常生活や社会生活で様々な困難に直面することで、**精神的・身体的なSOS(二次障害)**を引き起こすことが非常に多くあります。
ADHDの特性によって生じる主な心身のSOS(二次障害)としては、以下のような点が挙げられます。
- 慢性的なストレスと疲労: 不注意によるミスや多動性・衝動性による人間関係の摩擦、時間管理の困難などが日常的に起こることで、常にストレスにさらされ、心身ともに疲弊してしまいます。
- 自尊心の低下と自己肯定感の欠如: 周囲から「だらしない」「やる気がない」「変わっている」などと否定的な評価を受けたり、自分自身でも「なぜできないんだろう」と責めたりすることで、自尊心が著しく低下し、自己肯定感が持てなくなります。
- うつ病: 慢性的なストレス、失敗体験の積み重ね、周囲からの否定的な評価、自己肯定感の低下などが重なり、抑うつ気分、意欲の低下、不眠、食欲不振といったうつ病の症状を併発することが非常に多いです。
- 不安障害: 失敗することへの不安、人前で特性が出てしまうことへの不安、今後の生活への漠然とした不安などから、全般性不安障害や社交不安障害などを併発することがあります。
- 睡眠障害: 脳の覚醒水準の調整が苦手なため、寝つきが悪かったり、途中で目が覚めてしまったりする睡眠障害を抱える方が多くいます。睡眠不足は、さらに不注意や衝動性を悪化させる悪循環に陥ります。
- 身体症状: 慢性的なストレスや不安、睡眠不足などから、頭痛、肩こり、めまい、胃痛、便秘・下痢などの消化器症状、過敏性腸症候群、慢性疼痛といった身体症状が現れることがあります。これは、自律神経の乱れが大きく関わっています。
- 人間関係の困難: 衝動的な発言、話の割り込み、物忘れ、約束を守れないといった特性が、友人関係、家族関係、職場での人間関係に摩擦を生じさせ、孤立感を深めてしまうことがあります。
- 依存症(アルコール、ギャンブルなど): 衝動性のコントロールが苦手なため、衝動的な行動が依存症に繋がるリスクが高まります。
心療内科クリニックである当院では、ADHDの特性そのものへのアプローチだけでなく、特性によって生じるこれらの二次障害へのケアも非常に重要視しています。患者さんの抱える困りごとを丁寧に伺い、特性を理解した上で、二次障害の治療と、ストレス軽減や心の健康維持のためのサポートを統合的に行います。ADHDの特性、そしてそれに伴う心のつらさは、決して一人で抱え込むものではありません。私たちはあなたの悩みに真摯に寄り添い、共に解決策を見つけていきます。