• 2025年6月4日
  • 2025年6月2日

3,診断が難しいコロナ後遺症:専門医がどのようにアプローチするか

新型コロナウイルス感染症に罹患した後、つらい症状が長引くにもかかわらず、「検査では異常なし」「気のせいでは?」と言われてしまい、孤独や不安を感じている方も少なくありません。**コロナ感染後遺症(Long COVID)**は、残念ながら、特定の検査だけで診断できる明確な指標がないため、診断が非常に難しい病気の一つです。しかし、だからといって「治らない」わけではありません。専門医は、患者さんの訴えを丁寧に聞き、多角的に評価することで、診断と治療への道筋を見つけていきます。


なぜコロナ後遺症の診断は難しいのか

コロナ後遺症の診断が難しい主な理由は以下の通りです。

  1. 特異的な検査マーカーの欠如: 血液検査や画像検査(レントゲン、CT、MRIなど)で、コロナ後遺症を特異的に診断できる項目や異常が、今のところ確立されていません。
  2. 症状の多様性と非特異性: 症状は倦怠感、ブレインフォグ、呼吸苦、動悸、痛みなど非常に多岐にわたり、他のさまざまな病気でも見られる症状と重なるため、見分けがつきにくいことがあります。
  3. 症状の変動性: 日によって、あるいは時期によって症状の強さや種類が変化するため、一貫した症状として捉えられにくい側面もあります。

専門医が行う診断へのアプローチ

特異的な検査がないからこそ、専門医は以下の点を重視して、コロナ後遺症の診断と治療方針を決定していきます。

  1. 詳細な問診と症状の経過の確認: 最も重要となるのが、患者さんからの丁寧な問診です。
    • 新型コロナウイルス感染歴の確認: いつ、どのように感染し、その時の症状はどうだったか。
    • 現在の症状: どんな症状が、いつから、どのくらいの頻度で、どの程度の強さで現れているか。痛みの性質、疲労感の度合い、ブレインフォグによる困りごとなどを具体的に伺います。
    • 症状の変動: 日によって、あるいは活動によって症状がどう変化するか(例:少し動くと極端に疲れる「活動後倦怠感/PEM」など)。
    • 日常生活への影響: 仕事、家事、学業、趣味など、どのような活動に支障が出ているか。
    • 既往歴と服用中の薬: 他の病気や服用中の薬がないかを確認します。
  2. 他の疾患の鑑別(除外診断): コロナ後遺症と似た症状を引き起こす他の病気がないかを慎重に確認します。例えば、心臓病、肺疾患、甲状腺機能障害、貧血、自己免疫疾患、慢性疲労症候群、うつ病などです。これらの可能性を排除するために、必要に応じて以下のような検査を行うことがあります。
    • 血液検査: 炎症反応、甲状腺機能、貧血の有無、臓器機能などを確認します。
    • 心電図、心エコー: 動悸や胸痛がある場合に心臓の異常がないかを確認します。
    • 呼吸機能検査、胸部レントゲン/CT: 息切れや咳が続く場合に肺の状態を確認します。
  3. 総合的な評価: これらの情報(問診、身体診察、各種検査結果)を総合的に評価し、患者さんの症状が「新型コロナウイルス感染後に発症し、2ヶ月以上持続し、他の診断で説明できない」というコロナ後遺症の定義に当てはまるかどうかを判断します。

当クリニックでは、患者さんの「つらい」という訴えに真摯に耳を傾け、見えない症状の奥にある苦しみに寄り添います。そして、多角的な視点から慎重に診断を進め、あなたに合った最適な治療計画を共に考えてまいりますので、どうぞ安心してご相談ください。

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