- 2025年10月7日
- 2025年10月5日
3,過活動膀胱の正しい診断方法:専門医が行う検査とプロセス
「トイレが近いのは年のせいかな?」「恥ずかしいから病院には行きたくない…」。過活動膀胱の症状に悩んでいても、なかなか受診に踏み切れない方は少なくありません。しかし、過活動膀胱は適切な診断を受けることで、症状を大きく改善できる病気です。自己判断で我慢せず、泌尿器科などの専門医を受診し、ご自身の状態を正確に把握することが、快適な生活を取り戻すための第一歩となります。
診断の第一歩は「丁寧な問診と排尿日誌」
過活動膀胱の診断は、特定の画像検査や血液検査だけで完結するものではありません。患者さんの症状を詳細に聞き取ることが最も重要になります。
- 詳細な問診: 医師は、以下のような点を詳しくお伺いします。
- いつから症状に気づいたか: 症状の始まりと経過。
- 具体的な症状: 尿意切迫感の有無と程度、頻尿の回数(昼間・夜間)、切迫性尿失禁の有無と程度、尿漏れの状況など。
- 日常生活への影響: トイレの不安で外出を控える、睡眠が妨げられるなど、どのような影響が出ているか。
- 既往歴と服用中の薬: 過去の病気や現在服用している薬によっては、排尿症状に影響を与えることがあります(例:糖尿病、脳梗塞、高血圧治療薬の一部など)。
- 生活習慣: 水分摂取量、カフェイン・アルコールの摂取状況、排便習慣など。 患者さんからの情報は、診断の重要な手がかりとなります。
- 排尿日誌(膀胱日誌): 患者さんご自身に、排尿の記録を数日間(通常は2~3日間)つけていただくものです。これは過活動膀胱の診断において非常に重要な情報源となります。
- 排尿した時間と量: コップや容器を使って正確に測ります。
- 水分を摂取した時間と量: 飲んだものの種類も記録します。
- 尿意切迫感の有無と程度: 急な尿意があったかどうか、どれくらい強かったか。
- 尿漏れの有無と程度: 尿が漏れてしまった場合、その量や状況。 排尿日誌は、客観的なデータとして医師に提供され、患者さんの排尿パターンや症状の頻度・重症度を把握するのに役立ちます。また、患者さん自身も、自分の排尿習慣を客観的に見つめ直すきっかけとなります。
診断をサポートする検査
問診と排尿日誌の情報に加え、他の病気を除外したり、膀胱の機能をより詳しく調べたりするために、いくつかの検査が行われることがあります。
- 尿検査: 尿中に細菌がいないか(膀胱炎などの感染症の有無)、血液が混じっていないか、糖が出ていないか(糖尿病の可能性)などを確認します。膀胱炎が原因で頻尿や尿意切迫感が起きている場合もあるため、まず感染症を除外することが大切です。
- 残尿測定: 排尿後、膀胱内にどれくらいの尿が残っているかを測定します。超音波診断装置(エコー)を下腹部に当てるだけで簡単に測定でき、痛みはありません。残尿が多い場合は、尿の通り道が狭くなっている(男性の前立腺肥大症など)可能性があり、過活動膀胱とは異なる病態が考えられます。
- 尿流測定(尿の勢いを測る検査): 排尿時の尿の勢いや、排尿にかかる時間などを測定します。排尿障害があるかどうかを客観的に評価できます。
- 尿流動態検査(UDS:ユロダイナミクス検査): より専門的な検査で、膀胱に細い管(カテーテル)を入れて生理食塩水を注入しながら、膀胱の圧力や尿道の抵抗などを詳細に測定します。膀胱の過活動の有無や程度を正確に評価するのに役立ちますが、全ての患者さんに必要となるわけではありません。
正しい診断が適切な治療への道
これらの検査は、過活動膀胱であるかどうかの診断だけでなく、他の病気が原因ではないか(例えば、前立腺肥大症、膀胱炎、糖尿病、脳神経疾患など)を鑑別するためにも非常に重要です。原因が異なれば治療法も変わるため、正確な診断なくして適切な治療は始まりません。
もし、排尿の悩みを抱えているなら、決して一人で抱え込まず、泌尿器科の専門医にご相談ください。当クリニックでは、患者さんのデリケートな悩みに真摯に耳を傾け、丁寧な診察と適切な検査を通じて、あなたに最適な治療へと導きます。