- 2025年9月5日
- 2025年8月28日
9. ジストニアの外科的治療:脳深部刺激療法(DBS)の可能性
「薬や注射でも効果がない場合、何か他に治療法はないの?」。ジストニアの治療は、薬物療法やボツリヌス毒素注射が第一選択となりますが、これらの治療でも効果が見られない、または全身性の重度なジストニアの患者さんには、**脳深部刺激療法(DBS:Deep Brain Stimulation)**という外科的治療が検討されることがあります。この記事では、ジストニア治療におけるDBSの仕組み、対象となる患者さん、そしてその効果と注意点について解説します。
1. 脳深部刺激療法(DBS)とは?
DBSは、脳内の特定の部位に電極を埋め込み、そこから微弱な電気を流し続けることで、異常な神経活動を抑制し、運動症状を改善する治療法です。ジストニアのDBSでは、運動を司る大脳基底核の中にある特定の核(淡蒼球:GPiなど)が主なターゲットとなります。
2. DBSの仕組み
- 電極の埋め込み:
- 脳の奥深くにあるターゲット部位に、非常に細い電極を埋め込みます。この電極は、皮膚の下を通って、胸部に埋め込まれた刺激発生装置(ペースメーカーのようなもの)に接続されます。
- 電気刺激の調整:
- 刺激発生装置から流れる電気の強さ、頻度、パルス幅などを、患者さんの症状に合わせて調整します。
- 症状の改善:
- 常に微弱な電気刺激を流し続けることで、異常な神経活動が抑制され、ジストニアのねじれや不随意な動きが改善されます。
3. DBSの対象となる患者さん
DBSは、以下の条件を満たす患者さんに検討されることが多いです。
- 薬物療法やボツリヌス毒素注射で十分な効果が得られない、または副作用が強い。
- 重度の全身性ジストニアや分節性ジストニアの患者さん。
- 心因性(精神的な要因)ではないジストニアの患者さん。
- 全身状態が良好で、手術に耐えられる方。
4. DBSの効果と注意点
- 効果:
- 特に一次性ジストニアの患者さんで、高い治療効果が報告されています。
- 症状の改善には時間がかかることがありますが、効果が持続することが期待できます。
- 痛みの緩和や、QOLの向上が期待できます。
- 注意点:
- 手術のリスク: 開頭手術のため、出血や感染症などのリスクが伴います。
- 専門のチーム医療: DBSは、脳神経外科医、神経内科医、精神科医、リハビリテーション専門医など、専門的な知識と経験を持つチームが連携して行う必要があります。
- 術後の調整: 症状に合わせて、刺激の調整を継続的に行う必要があります。
- すべてを治すわけではない: 症状が完全に消失するわけではなく、改善を目指す治療です。
DBSは、ジストニアに悩む患者さんにとって、最後の希望となる治療法の一つです。しかし、手術にはリスクが伴い、長期的なケアが必要です。
当クリニックでは、DBSの適応について、患者さんの症状や生活背景を総合的に判断し、必要に応じてDBS治療の経験が豊富な専門病院へのご紹介を行っております。ジストニアの症状でお悩みの方は、まずはお気軽にご相談ください。