- 2025年8月11日
- 2025年8月8日
4,線維筋痛症の診断は難しい?専門医がどのように診断するのか
全身の痛みや疲労感、不眠…線維筋痛症は、見た目ではわからない症状が多く、検査をしても異常が見つかりにくいため、「気のせいではないか」「精神的なものだ」と誤解され、診断に至るまでに時間がかかることが少なくありません。しかし、線維筋痛症の診断には、医師の専門的な知識と丁寧な問診が不可欠です。ここでは、専門医がどのように線維筋痛症を診断していくのか、そのプロセスについて解説します。
特異的な検査がない線維筋痛症
残念ながら、線維筋痛症には、血液検査や画像診断(レントゲン、MRIなど)で異常がはっきりと現れるような、特異的な診断マーカーがありません。これが、診断を難しくしている大きな理由の一つです。そのため、診断は主に患者さんからの詳細な問診と、他の病気との鑑別診断(見分け方)によって行われます。
診断のポイント:問診と除外診断
線維筋痛症の診断は、以下の点を総合的に評価して行われます。
- 広範囲にわたる慢性的な痛み:
- 身体の右半身と左半身、そして上半身と下半身の両方に痛みがあること。
- 体幹(首、背中、胸、腰など)にも痛みがあること。
- このような痛みが3ヶ月以上継続していること。 患者さん自身の言葉で、痛みの場所、性質(ズキズキ、ジンジンなど)、強さ、頻度、悪化・改善要因などを具体的に伝えることが非常に重要です。
- 併発する症状の確認: 痛みだけでなく、慢性疲労、睡眠障害、認知機能の低下(ブレインフォグ)、頭痛、過敏性腸症候群、精神症状(うつ、不安)など、痛み以外の症状があるかどうかも確認します。これらの症状の有無や程度も、診断の重要な手がかりとなります。
- 圧痛点(あっつうてん)の確認(旧診断基準): かつての診断基準では、身体の特定の18箇所(例えば、首の付け根、肩、肘の外側、お尻など)にある圧痛点のうち、11箇所以上で指で押したときに痛みがあるかどうかが重視されていました。現在では、この圧痛点の数は絶対的なものではありませんが、依然として診断の参考とされることがあります。
- 他の病気の除外: 線維筋痛症と似た症状を示す病気は少なくありません。例えば、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、甲状腺機能低下症、多発性硬化症、うつ病などです。これらの病気ではないことを確認するため、血液検査や画像検査などを行い、他の疾患を除外していくことが診断のプロセスにおいて非常に重要です。これにより、誤診を防ぎ、適切な治療へと繋がります。
専門医への相談の重要性
線維筋痛症の診断には、慢性疼痛や膠原病、精神神経科の専門知識を持つ医師による総合的な判断が必要です。原因不明の全身の痛みに悩まされている方は、一人で抱え込まず、線維筋痛症の診療経験がある専門医を受診することをお勧めします。
当クリニックでは、患者さんの症状や悩みに真摯に耳を傾け、丁寧な問診と必要に応じた検査を通じて、正確な診断に努めます。そして、診断後は、患者さん一人ひとりに合わせた治療計画を共に考えてまいりますので、どうぞ安心してご相談ください。