- 2025年8月10日
- 2025年8月8日
3,なぜ治らないの?線維筋痛症の原因と発症のメカニズムを探る
全身の痛みに加え、疲労感、不眠、頭痛…線維筋痛症は、まるで全身を蝕むように、いくつものつらい症状を伴います。「なぜこんなに痛いのか」「どうして治らないのか」と、その原因について疑問や不安を感じている方も多いでしょう。線維筋痛症の原因はまだ完全には解明されていませんが、近年の研究によって、その発症メカニズムについていくつかの手がかりが得られています。
痛みの「ブレーキ」が効かない?脳の機能異常
線維筋痛症の最も有力な原因として考えられているのが、脳の機能異常です。私たちの脳には、痛みを感知する「アクセル」と、痛みを抑える「ブレーキ」のような役割を果たす神経回路があります。線維筋痛症の患者さんでは、この痛みを抑える**「ブレーキ」がうまく機能していない**と考えられています。
- 痛覚過敏: 通常では痛みと感じない程度の刺激(軽く触れる、温度変化など)に対しても、脳が過剰に反応し、強い痛みとして認識してしまう状態です。
- 痛みのコントロール機能の低下: 脳内で痛みを抑制する神経伝達物質(セロトニン、ノルアドレナリンなど)の働きが低下していることや、痛みの情報を処理する脳の部位の活動に異常があることが指摘されています。
このため、脳が「痛い」という信号を強く受け取り続け、全身の痛みが慢性化してしまうと考えられています。
引き金となる可能性のある要因
線維筋痛症は、特定の原因が一つだけあるわけではなく、いくつかの要因が複合的に絡み合って発症すると考えられています。
- 身体的ストレス:
- 外傷や手術: 交通事故や転倒による怪我、大きな手術などがきっかけで発症することがあります。
- 感染症: ウイルス感染や細菌感染の後、線維筋痛症の症状が現れるケースも報告されています。
- 精神的ストレス: 身近な人の死、失業、過労など、精神的な強いストレスやショックが発症の引き金となることがあります。慢性的なストレスは、自律神経の乱れを通じて痛みを増幅させる可能性も指摘されています。
- 自律神経系の乱れ: 交感神経と副交感神経のバランスが崩れることで、痛みの閾値(痛みを感じる境界線)が低下したり、血流が悪くなったりして、痛みが悪化すると考えられています。線維筋痛症の患者さんに不眠や疲労感が併発しやすいのも、自律神経の乱れと関連が深いとされています。
- 遺伝的要因: ご家族に線維筋痛症の患者さんがいる場合、発症リスクがわずかに高まることが示されており、遺伝的な素因も関与している可能性が指摘されています。
このように、線維筋痛症は、脳の機能異常を背景に、様々な要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。原因が多岐にわたるため、単一の治療法で完治させるのが難しい面もありますが、それぞれの患者さんの状態や背景に合わせた多角的なアプローチによって、症状をコントロールし、生活の質を向上させることが可能です。
当クリニックでは、これらの複雑な原因に目を向け、患者様一人ひとりに最適な治療計画をご提案いたします。線維筋痛症でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。