• 2025年8月4日

1. 「分かっているのに止められない」その思考と行動、強迫性障害かもしれません

「鍵を閉めたか何度も確認してしまう」「手が汚れている気がして、何十回も洗ってしまう」「悪いことが起こる予感がして、特定の行動を繰り返してしまう」。頭では「おかしい」「やりすぎだ」と分かっているのに、その考えや行動を止められない。もしあなたが、このような思考や行動に囚われ、日常生活に大きな支障が出ているなら、それは「強迫性障害(OCD:Obsessive-Compulsive Disorder)」かもしれません。

強迫性障害ってどんな病気? 強迫性障害は、**「強迫観念」「強迫行為」**を主な症状とする心の病気です。

  • 強迫観念(Obsession): 自分の意思に反して、頭の中に繰り返し浮かんでくる不快な考え、イメージ、衝動のことです。これらは非常に不快で、不安や嫌悪感、不潔感などを引き起こしますが、自分でコントロールしようとしてもできません。「こんなことを考えてはいけない」と打ち消そうとすればするほど、かえって強くなる傾向があります。
    • 例:「手が汚れている」「戸締まりができていない」「誰かを傷つけてしまうかもしれない」「病原菌がつくかもしれない」
  • 強迫行為(Compulsion): 強迫観念によって生じる不安や不快感を打ち消したり、悪いことが起こるのを防いだりするために、**「やらずにはいられない」**と感じて繰り返してしまう行為のことです。これは、特定の儀式的な行動であることもあれば、精神的な行為(心の中で数える、特定の言葉を繰り返すなど)であることもあります。
    • 例:何度も手洗いをする、何度も確認する、物の配置を完璧に整える、特定の順序で行動する、心の中で呪文を唱える

強迫性障害の患者さんは、これらの強迫観念と強迫行為に多くの時間を費やしてしまい、仕事や学業、人間関係、家庭生活など、日常生活の様々な側面に深刻な影響が出ます。ご自身でも「馬鹿げている」「意味がない」と認識しているケースがほとんどですが、それでもその行動を止められないという苦しみが、この病気の特徴です。

主な強迫観念と強迫行為の種類

  1. 洗浄強迫・汚染強迫:
    • 観念:手が汚れている、細菌が付着している、排泄物が付いている
    • 行為:何十回も手洗いをする、体を洗い続ける、服を何度も洗濯する、特定の場所を何度も拭く
  2. 確認強迫:
    • 観念:鍵を閉め忘れた、ガス栓を閉め忘れた、火事を起こすかもしれない、誰かに危害を加えたかもしれない
    • 行為:何度も鍵やガス栓を確認する、電気のスイッチを何度も確認する、事故現場に戻って確認する
  3. 加害強迫:
    • 観念:誰かを傷つけてしまうかもしれない、子どもを虐待してしまうかもしれない、変な言葉を発してしまうかもしれない
    • 行為:刃物を隠す、特定の場所や人を避ける、人に近づかない
  4. 不完全強迫・対称性へのこだわり:
    • 観念:物が完璧な位置にない、左右対称でないと落ち着かない、特定の数字にしないと気が済まない
    • 行為:物を何回も並べ直す、特定の順序で行動する、特定の数字にこだわる
  5. 不潔恐怖:
    • 観念:特定の場所や物に触ると不潔になる、病気になる
    • 行為:特定のものに触れない、特定の場所に行かない、除菌を過剰に行う

これらの症状は、患者さんに多大な苦痛を与え、生活の質を著しく低下させます。

もし症状に気づいたら… 「まさか自分が病気だとは思わなかった」「周りに言っても理解されないだろう」。強迫性障害の苦しみは、周囲から見えにくく、一人で抱え込みやすいものです。しかし、これは治療によって確実に改善できる病気です。もしあなたが、上記のような思考や行動に囚われ、苦しんでいるなら、決して自己判断せずに、心療内科や精神科などの専門医を受診することが、この苦しみから抜け出し、自由な日常を取り戻すための第一歩となります。

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