- 2025年7月28日
- 2025年7月22日
7,円形脱毛症と自己免疫疾患の関連:合併しやすい病気とは?
円形脱毛症は、突然髪の毛が抜け落ちることに大きなショックを受ける病気です。多くの方がその原因に不安を感じますが、実は円形脱毛症は、自己免疫疾患という体のシステムの問題と深く関わっています。そして、円形脱毛症と診断された場合、他の自己免疫疾患を合併しやすい傾向があることも知られています。これは、体全体の健康を考える上で非常に重要な視点です。
自己免疫疾患としての円形脱毛症
私たちの体には、外部からの侵入者(ウイルスや細菌など)から身を守るための「免疫システム」が備わっています。しかし、自己免疫疾患では、この免疫システムが何らかの原因で誤作動を起こし、自分の体の正常な細胞や組織を「敵」と認識して攻撃してしまいます。
円形脱毛症の場合、毛髪を作り出す「毛包(もうほう)」が免疫システムの攻撃対象となります。これにより毛の成長が妨げられ、脱毛が起こるのです。毛包が完全に破壊されるわけではないため、攻撃が止まれば再び発毛する可能性があるのが特徴です。
円形脱毛症と合併しやすい自己免疫疾患
円形脱毛症の患者さんは、そうでない人に比べて、他の自己免疫疾患を合併するリスクが高いことが報告されています。これは、免疫システムの特性が共通しているためと考えられます。特に以下の疾患との関連がよく知られています。
- 甲状腺疾患:
- 橋本病(慢性甲状腺炎): 甲状腺に対する自己抗体ができて、甲状腺機能が低下する病気です。倦怠感、むくみ、便秘、寒がりなどの症状が現れます。
- バセドウ病: 甲状腺を刺激する自己抗体ができて、甲状腺機能が亢進する病気です。動悸、発汗、体重減少、眼球突出などの症状が見られます。 円形脱毛症の患者さんの約2〜3割に甲状腺疾患の合併が見られるという報告もあり、特に注意が必要です。
- アトピー性皮膚炎などのアトピー素因: アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎といったアレルギー体質を持つ人に、円形脱毛症が多く見られることが知られています。これは、免疫システムの反応性が関連していると考えられます。
- 白斑(尋常性白斑): 皮膚の色素を作る細胞(メラノサイト)が自己免疫によって攻撃され、皮膚の一部が白く抜けてしまう病気です。円形脱毛症と同様に、免疫システムの異常が原因とされています。
- 全身性エリテマトーデス(SLE): 全身の様々な臓器に炎症が起こる自己免疫疾患です。皮膚症状、関節炎、腎炎など多岐にわたる症状が現れることがあります。
- 関節リウマチ: 関節の炎症が慢性的に続き、関節の痛みや腫れ、変形を引き起こす自己免疫疾患です。
これらの疾患が合併している場合、それぞれの病気の症状が現れるだけでなく、円形脱毛症の治療にも影響を与える可能性があります。
全身的な視点での診療の重要性
円形脱毛症は単なる皮膚の病気ではなく、体全体の免疫システムと関連する疾患であると理解することが大切です。そのため、脱毛斑の治療だけでなく、もし他の自己免疫疾患の兆候がある場合は、それらを早期に発見し、適切な治療を行うことが重要になります。
もし、円形脱毛症の他に、上記で挙げたような他の自己免疫疾患を疑わせる症状がある場合は、遠慮なく医師に伝えてください。当クリニックでは、円形脱毛症の治療はもちろんのこと、患者さんの全身の健康状態を総合的に評価し、必要に応じて関連する検査や専門医への紹介も行います。心と体の両面からアプローチすることで、より良い回復を目指しましょう。