- 2025年7月25日
- 2025年7月22日
4,円形脱毛症の最新治療法:症状に合わせた薬物療法と注射
突然の脱毛斑に気づいた時、多くの人が「もう髪が生えてこないのでは」と絶望的な気持ちになるかもしれません。しかし、円形脱毛症の治療法は日々進化しており、現在の医療では様々な選択肢があります。脱毛の範囲や進行度合い、患者さんの年齢や体質に合わせて、最適な治療法を組み合わせることで、発毛を促進し、症状の改善を目指すことが可能です。
治療の基本方針:毛包への攻撃を抑え、発毛を促す
円形脱毛症は、自己免疫疾患によって毛根が攻撃されることで起こります。そのため、治療の主な目的は、免疫システムの誤作動を抑え、毛包への攻撃を鎮めるとともに、毛母細胞の働きを活性化させて発毛を促すことです。
脱毛の範囲に応じた主な薬物療法
円形脱毛症の治療は、脱毛斑の大きさや数、進行度合いによって選択肢が変わります。
- ステロイド外用薬:
- 軽症~中等症の単発型や多発型によく用いられます。
- 炎症を抑える作用があるステロイドを直接脱毛斑に塗ることで、毛包への免疫攻撃を抑制し、発毛を促します。
- 副作用として、長期使用による皮膚の萎縮などがあるため、医師の指示に従って適切に使用することが重要です。
- 局所免疫療法:
- 多発型や全頭型、汎発型など、脱毛範囲が広い場合に有効な治療法です。
- **SADBE(スクアリン酸ジブチルエステル)やDPCP(ジフェンシプロン)**という化学物質を脱毛斑に塗布し、意図的に軽いアレルギー性接触皮膚炎を起こさせます。
- これにより、毛包を攻撃しているリンパ球の働きを抑制し、発毛を促すと考えられています。
- かゆみや赤み、かぶれなどの症状が出ますが、これは治療が効いている証拠でもあります。
- JAK(ヤヌスキナーゼ)阻害薬:
- 比較的新しく、重症型の円形脱毛症に対して承認された内服薬です。
- **オルミエント®(バリシチニブ)やリトレシチニブ(商品名:リットフーロ)**などが、このカテゴリーに属します。
- 免疫に関わるJAKという酵素の働きをブロックすることで、毛包への攻撃を抑え、発毛を促します。
- 全頭型や汎発型など、これまでの治療で効果が見られなかった重症の患者さんにとって、新たな希望となる治療法です。ただし、副作用のリスクもあるため、専門医による慎重な判断と定期的な検査が必要です。
- ステロイド局所注射:
- 単発で比較的サイズの小さい脱毛斑に対して行われます。
- ステロイドを直接脱毛斑の真皮内に注射することで、強い抗炎症作用が期待できます。
- 即効性がありますが、注射時の痛みや皮膚のへこみなどの副作用があるため、使用頻度や量には制限があります。
- ミノキシジル外用薬:
- 発毛を促進する作用がある外用薬で、血行を改善し、毛母細胞を活性化させると考えられています。
- 他の治療と併用して、発毛をサポートする目的で使われることがあります。
- 内服ステロイド:
- 急速に脱毛が進行している場合や、脱毛範囲が広い場合に、一時的に内服することもあります。
- 強い抗炎症作用がありますが、副作用も大きいため、短期間の使用にとどめるのが一般的です。
専門医との連携が不可欠
これらの治療法は、患者さんの脱毛のタイプ、範囲、進行度合い、年齢、体質、そして副作用のリスクなどを総合的に考慮し、専門医が慎重に判断して選択します。自己判断で治療を進めることは避け、必ず皮膚科などの専門医に相談し、最適な治療計画を立ててもらうことが大切です。
当クリニックでは、患者さん一人ひとりの状態を丁寧に診察し、最新の知見に基づいた最適な治療法をご提案します。薬物療法に加え、非薬物療法や当院独自の「サトワタッチケア」も組み合わせることで、より効果的な発毛と心のケアを目指します。諦めずに、一緒に発毛への道を歩みましょう。