• 2025年7月29日
  • 2025年7月22日

記事8.アルツハイマー型認知症の進行段階とそれぞれの症状、対応のポイント

アルツハイマー型認知症は、その進行度によって現れる症状や、必要となるケアが変化します。病気の段階を理解することで、患者さんの状態に合わせた適切なサポートを提供し、ご本人とご家族の負担を軽減することができます。一般的に、認知症の進行は軽度、中度、重度の3段階に分けられます。

1. 軽度認知症(初期)

この段階では、日常生活はほぼ自立していますが、以下のような症状が見られます。

  • 症状: 新しいことを覚えられない(数分前の出来事を忘れる)、日付や曜日が不確かになる、言葉が出てこない、物の置き場所を忘れて探し物が増える、以前できていた家事や趣味が少し難しくなる、意欲の低下や、些細なことで怒りっぽくなるなど、気分の変化が見られることもあります。
  • 対応のポイント:
    • 早期受診: 症状に気づいたらすぐに専門医を受診し、診断と治療を開始することが最も重要です。
    • 残された能力を活かす: できることを見つけ、積極的に取り組むよう促しましょう。趣味や社会参加を継続することが大切です。
    • メモや記録: メモを活用したり、スケジュールを分かりやすい場所に掲示したりして、記憶を補いましょう。
    • 優しい声かけ: 「忘れても大丈夫」という安心感を与え、繰り返し尋ねられても穏やかに対応しましょう。

2. 中度認知症(中期)

軽度よりも症状が進行し、日常生活に介助が必要となることが増えます。

  • 症状: 過去の記憶も曖昧になる、時間や場所の見当識障害が顕著になる(自宅で道に迷う、季節に合わない服を着る)、着替えや入浴、排泄に介助が必要になる。徘徊、妄想(物盗られ妄想など)、幻視、興奮などの行動・心理症状(BPSD)が現れることが多くなります。
  • 対応のポイント:
    • BPSDへの対応: 症状の背景にあるご本人の不安や困りごとを理解しようと努め、否定せずに共感しましょう。安全な環境を整えることも重要です。
    • 介助の工夫: できることはご本人に任せ、難しい部分だけをサポートするなど、尊厳を大切にした介助を心がけましょう。
    • 介護サービスの活用: デイサービスやショートステイなど、介護保険サービスを積極的に利用し、介護者の負担を軽減しましょう。
    • コミュニケーション: 穏やかな声でゆっくり話しかけ、アイコンタクトを取り、安心感を与えましょう。

3. 重度認知症(末期)

認知機能が著しく低下し、ほとんどの日常生活動作に全介助が必要となります。

  • 症状: 自力での移動が困難になり、ほとんど寝たきりになる、食事や排泄も全介助が必要。言葉によるコミュニケーションが非常に難しくなり、意思の疎通が困難になる。
  • 対応のポイント:
    • 身体介護: 清潔の保持、褥瘡(じょくそう)予防、栄養管理、誤嚥(ごえん)防止など、身体的なケアが中心となります。
    • 非言語コミュニケーション: 表情、声のトーン、触れることなどで愛情や安心感を伝えましょう。
    • 看取りの準備: 終末期のケアについて、ご家族と医療・介護チームで話し合い、最期の時間を穏やかに過ごせるよう準備を進めます。

各段階で現れる症状は異なりますが、共通して大切なのは、患者さん一人ひとりの個性と尊厳を尊重することです。私たち専門医や介護のプロフェッショナルが、ご家族と共に患者さんの生活を支え、より良い日々を過ごせるよう全力でサポートいたします。


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