• 2025年7月25日
  • 2025年7月22日

記事4.アルツハイマー型認知症の治療法:薬物療法と非薬物療法

「アルツハイマー型認知症は治らない病気」というイメージが強いかもしれませんが、決してそうではありません。現在の医療では完治は難しいものの、適切な治療によって症状の進行を遅らせたり、行動・心理症状(BPSD)を軽減したり、生活の質(QOL)を維持したりすることは十分に可能です。治療は大きく分けて薬物療法と非薬物療法の二つがあります。

薬物療法

薬物療法は、脳の神経伝達物質の働きを調整することで、認知機能の低下を緩やかにしたり、BPSDを改善したりすることを目的とします。

主に使われる薬としては、**コリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン)NMDA受容体拮抗薬(メマンチン)**があります。コリンエステラーゼ阻害薬は、記憶や学習に関わるアセチルコリンという神経伝達物質を増やすことで、認知機能を改善する効果が期待されます。メマンチンは、脳の興奮を抑えることで、認知機能の低下を抑制したり、BPSDを改善したりする効果があるとされています。

近年、アルツハイマー病の原因とされるアミロイドβの蓄積に直接作用する**新薬(レカネマブなど)**が登場し、注目を集めています。これらの薬は、早期のアルツハイマー病患者さんに限定されますが、病気の進行そのものを抑制する可能性を秘めており、今後の治療に大きな期待が寄せられています。

ただし、どの薬も効果や副作用には個人差があります。医師とよく相談し、患者さんの状態に合わせた適切な薬を選ぶことが重要です。

非薬物療法

薬物療法と並行して、非薬物療法も非常に大切です。これは、患者さんの残された能力を活かし、生活の質を高めるためのアプローチです。

  • 認知リハビリテーション: 脳トレ、計算、読み書きなど、認知機能を刺激する活動。
  • 回想法: 昔の出来事を語り合うことで、記憶を刺激し、精神的な安定を図る。
  • 音楽療法: 音楽を聴いたり歌ったりすることで、感情を豊かにし、コミュニケーションを促す。
  • アロマセラピー: 香りによってリラックス効果や気分転換を図る。
  • 運動療法: 適度な運動は、脳の活性化だけでなく、身体機能の維持や気分の改善にもつながる。
  • 生活習慣の改善: 栄養バランスの取れた食事、質の良い睡眠、規則正しい生活リズムの維持。

これらの非薬物療法は、患者さんの興味や残された能力に合わせて個別に行うことで、より効果を発揮します。

アルツハイマー型認知症の治療は、医師だけでなく、看護師、薬剤師、リハビリテーション専門職、介護士、そしてご家族が連携し、チームで患者さんを支えていくことが成功の鍵となります。症状や状況に応じて適切な治療法を組み合わせ、患者さんらしい生活を長く続けていけるようサポートしていきましょう。

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