• 2025年7月23日
  • 2025年7月22日

記事2.記憶力の低下だけじゃない!アルツハイマー型認知症の多様な症状

アルツハイマー型認知症といえば「物忘れ」というイメージが強いですが、実はそれ以外にも非常に多様な症状が現れます。記憶力の低下は氷山の一角に過ぎず、病気が進行するにつれて様々な形で日常生活に影響を及ぼします。これらの症状を理解することで、患者さんへのより良い接し方やサポートが見えてきます。

記憶障害に加え、多くの患者さんに見られるのが見当識障害です。これは、今が何月何日なのか、ここがどこなのか、目の前の人が誰なのか、といった基本的な情報が分からなくなる症状です。例えば、自宅にいながら「家に帰りたい」と言ったり、季節に合わない服装をしたがったりすることがあります。

また、実行機能障害も顕著です。これは、物事を順序立てて考え、計画し、実行することが難しくなる症状です。料理の段取りが組めない、複雑な家電製品が使えない、といった形で現れ、日常生活に大きな支障をきたします。

言葉の理解や表現が難しくなる失語、箸の使い方が分からなくなるなどの失行、目の前のものが何であるか認識できない失認といった症状も、患者さんのQOL(生活の質)を低下させる要因となります。

さらに、多くのご家族が悩まれるのが行動・心理症状(BPSD)です。これには、夜間に落ち着かなくなり家の中を歩き回る徘徊、財布を盗まれたと訴える物盗られ妄想、実際にはいないものが見える幻視などが含まれます。怒りっぽくなったり、抑うつ的になったり、逆に無気力になったりすることもあります。これらの症状は、ご本人が混乱しているために起こることが多く、介護者の大きな負担となる場合があります。

これらの多様な症状に対しては、それぞれの症状に応じた対応が必要です。例えば、見当識障害にはカレンダーや時計を分かりやすい場所に置く、実行機能障害には手順を細分化して伝える、BPSDには否定せずに共感し、安心できる環境を整えるなどが有効です。

アルツハイマー型認知症は、脳の機能が段階的に低下していく病気であり、症状の変化も個人差が大きいです。ご本人やご家族だけで抱え込まず、私たち専門医やケアマネジャーなど、多職種連携でサポートしていくことが大切です。症状の背景にある「ご本人の困りごと」を理解しようと努める姿勢が、より良いケアにつながります。

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