- 2025年7月14日
- 2025年7月9日
7. 家族の「心のケア」〜終末期における家族のグリーフケアとサポート〜
患者さん自身の苦しみだけでなく、**終末期はご家族にとっても、大きな悲しみや不安、そして計り知れないストレスが押し寄せる時期です。**大切な人の命が終わりに近づく過程で感じる心の痛みは、言葉にできないほど深く、そして複雑なものです。終末期ケアでは、患者さんだけでなく、そのご家族の「心のケア」にも深く寄り添い、サポートすることの重要性を重視しています。
終末期における家族の「心の状態」
患者さんの終末期において、家族は様々な感情を経験します。
- 予期悲嘆(アンティシペイトリー・グリーフ):
- 愛する人が亡くなる前から、その死を予期し、悲しみや喪失感を経験することです。
- 「もうすぐこの人がいなくなる」という現実を受け入れられない気持ちと、同時に「早く楽になってほしい」という複雑な感情が入り混じることもあります。
- 看病疲れ、睡眠不足、経済的な不安なども重なり、心身ともに疲弊しやすい状態です。
- 罪悪感と後悔:
- 「もっと何かできたのではないか」「あの時、ああすればよかった」といった罪悪感や後悔の念。
- 患者さんが苦しんでいることに対し、「代わってあげられない」という無力感。
- 怒りや混乱:
- 病気や、医療従事者、あるいは患者さん自身に対して、怒りや不満を感じることがあります。
- 情報が多すぎたり、状況が急変したりすることで、混乱し、正しい判断ができないと感じることもあります。
- 孤立感:
- 看病に追われる中で、社会との接点が減り、孤独を感じやすくなります。周囲に「分かってもらえない」と感じることもあります。
家族への具体的なサポート
- 情報提供と意思決定への参加:
- 患者さんの病状や治療方針について、家族が理解できるよう、分かりやすく、丁寧な説明を行います。
- 「もしもの時」のための意思決定(ACP)の場には、積極的に家族も参加し、患者さんの意思を尊重しながら共に考えるプロセスを支えます。
- 傾聴と感情の受容:
- 家族が抱える不安や悲しみ、怒りといった感情を否定せず、ただ寄り添い、耳を傾けることが大切です。
- 「辛いんだね」「よく頑張っているね」といった共感の言葉をかけましょう。
- 看病負担の軽減と休息の確保:
- 家族だけで抱え込まず、訪問看護や訪問介護、ショートステイなど、利用できる介護保険サービスや地域の支援を積極的に活用するよう促します。
- 家族自身も適度な休息を取り、リフレッシュできる時間を持つことが重要です。
- グリーフケア(死別後の悲嘆ケア):
- 患者さんの看取り後、遺された家族は深い悲しみに直面します。この悲しみを乗り越えるための専門的なサポートがグリーフケアです。
- 家族会や自助グループ: 同じような経験を持つ人々と感情を共有し、支え合う場です。
- カウンセリング: 専門家との個別カウンセリングで、悲しみのプロセスを理解し、健康的に悲嘆と向き合う方法を学びます。
- 追悼の場の提供: 故人を偲び、感謝の気持ちを伝える場を設けることも、悲しみを乗り越える助けになります。
終末期における家族の心のケアは、患者さんへのケアと同じくらい重要です。家族が心身ともに健康でいられることが、患者さんの安らかな最期、そしてその後の家族の生活にも大きく影響します。もし、あなたが終末期ケアに直面し、心の辛さを感じているなら、どうぞ一人で抱え込まず、当院にご相談ください。私たちは、患者さんだけでなく、ご家族の心のケアにも全力で寄り添います。