- 2025年7月11日
- 2025年7月3日
9. 家族や友人ができること〜身体表現性障害で悩む人を支えるために〜
「大切な人が、いつも体のどこかが悪いと訴えているのに、検査では異常がないらしい…」「どう声をかけたらいいか、どんなサポートができるのか分からない」。身近な人が身体表現性障害(現:身体症状症)に悩んでいる時、あなたはどのように接すれば良いか、何ができるのか、戸惑ってしまうかもしれません。しかし、あなたの理解と適切なサポートは、身体表現性障害で苦しむ人にとって、かけがえのない力となります。
支える側がまず知っておくべきこと
- 「病気である」という理解:
- 身体表現性障害は、「気のせい」や「怠け」「大げさ」ではありません。精神的なストレスや心理的要因が身体症状として現れる「病気」であり、本人の意志や努力だけではコントロールできない症状です。
- 症状はご本人にとって本当に苦痛であることを理解しましょう。安易に「気にしすぎだ」などと言ってはいけません。
- 身体症状と精神症状の繋がりを理解する:
- 心と体は密接に繋がっていることを理解しましょう。精神的なストレスが身体に影響を与えることは、決して特別なことではありません。
- 「目に見えない病気」であるため、周りからは理解されにくいことを知っておきましょう。
- 「ドクターショッピング」の背景を理解する:
- 本人が様々な病院を巡るのは、原因不明の身体症状に対する不安や、本当に苦しんでいることを理解してほしいという切実な願いの表れであることを理解しましょう。
家族や友人にできる具体的なサポート
- 傾聴と共感:
- 本人が話したい時に、批判せず、ただ寄り添い、耳を傾けましょう。
- 「それは辛いね」「大変な思いをしているんだね」といった共感の言葉をかけることが大切です。
- 身体症状について詳しく聞くよりも、その症状によって本人がどれだけ苦しいかを理解する姿勢が重要です。
- 症状を否定しない、無理強いしない:
- 「異常なしって言われたんでしょ?」「気のせいだよ」など、症状を否定する言葉は絶対に避けましょう。
- 「もっと頑張って動けば治る」など、本人が負担に感じるような行動を無理強いすることもやめましょう。
- 受診を優しく促す:
- 本人が精神科や心療内科への受診に抵抗がある場合も多いです。
- 「体の不調を和らげるために、心と体の繋がりを診てくれる専門の先生がいるよ」といったように、精神的なアプローチの必要性を穏やかに伝えましょう。
- 必要であれば、一緒に病院へ付き添い、診察室で症状を説明する手助けをすることも有効です。
- 感情の表現を促す:
- 身体表現性障害の人は、感情を抑圧しがちな傾向があります。
- 「何か心配なことがある?」「最近、疲れているように見えるけど大丈夫?」など、感情について話せるような問いかけをしてみましょう。
- 話を聞く際は、途中で遮らず、最後まで耳を傾けましょう。
- 日常生活でのストレスを減らす:
- ストレスは症状を悪化させる大きな要因です。本人のストレスの原因を探り、可能な範囲でそれを軽減できるような協力体制を考えましょう。
- 家事や育児の分担、仕事の負担軽減、リラックスできる時間を作る、一緒に趣味を楽しむなど。
- 完璧主義を手放す手助けをする:
- 「完璧でなければならない」「常に頑張らなければならない」という本人のプレッシャーを和らげる手助けをしましょう。
- 「多少不調があっても大丈夫だよ」「完璧じゃなくても十分だよ」といった、温かい言葉をかけましょう。
- 休息を取ることや、助けを求めることを自分に許すよう促しましょう。
- 小さな成功を共有し、励ます:
- 体調が少しでも良い日があった、気分が明るくなったなど、どんなに小さなことでも、「今日はよく眠れたね!」「少し元気そうだね!」と具体的に褒め、励ましましょう。
- ポジティブなフィードバックが、本人の自信に繋がり、治療へのモチベーションを高めます。
- 家族や友人自身も心のケアを:
- 大切な人が苦しんでいるのを見るのは辛いことです。支える側も精神的な負担を感じることがあります。
- 自分自身のストレスも管理し、必要であれば信頼できる人に相談するなど、自身の心のケアも大切にしてください。
身体表現性障害で悩む人を支えることは、根気と理解が必要です。もし、どのように支えれば良いか悩んだら、どうぞ当院にご相談ください。私たちは、患者さんだけでなく、ご家族の心の健康もサポートいたします。