• 2025年7月9日
  • 2025年7月3日

7. 心と身体に働きかける〜身体表現性障害と精神療法・生活習慣の改善〜

「薬を飲むだけでなく、もっと心のケアもしたい」「この慢性的な身体の不調を、根本から改善する方法はないだろうか」。身体表現性障害(現:身体症状症)の治療において、薬物療法は症状の緩和に有効ですが、それと並行して、あるいは症状の程度によっては単独で、心と身体の両面に働きかける精神療法や生活習慣の改善が非常に重要な役割を果たします。これらは、症状の背景にある心理的要因や、心身のバランスの乱れにアプローチし、持続的な改善を目指します。

なぜ精神療法が身体表現性障害に有効なのか?

身体表現性障害は、身体の不調に加え、症状への過度な囚われや、それによって生じる強い不安、ストレス、感情の抑圧などが密接に関わっています。精神療法は、これらの心理的側面に対処し、患者さんの心の状態を整えることで、身体症状の緩和を目指します。

  1. 認知行動療法(CBT):
    • 自分の**「認知(考え方や物事の捉え方)」「行動」**が感情や身体症状に影響を与えるという考えに基づいています。
    • 身体表現性障害の場合の応用例:
      • 認知の修正: 「この症状は重い病気のサインだ」「私の体はもう治らない」といった、症状を悪化させるような非現実的・否定的な思考パターンを特定します。そして、「多少の不調は誰にでもある」「症状に囚われすぎないようにしよう」といった、より現実的でバランスの取れた思考に変えていく練習をします。
      • 行動の変容: 症状のために外出を避ける、活動を制限するといった**回避行動を少しずつ減らし、段階的に活動範囲を広げていきます。**例えば、短い散歩から始め、徐々に趣味や社会活動へ参加するなど、成功体験を積み重ねることで、自信を取り戻し、不安を軽減します。
      • 身体感覚への対処: 身体の痛みや不快な感覚に過敏に反応する傾向を理解し、それらを評価せずに受け入れる練習を行います。
  2. 精神力動療法:
    • 症状の背景にある無意識の心理的葛藤や、過去のトラウマ、抑圧された感情などに焦点を当て、それらを理解し、処理していくことを目指します。
    • 患者さんの過去の経験と現在の症状の繋がりを探ることで、自己理解を深め、感情の解放を促します。
  3. 支持的精神療法(カウンセリング):
    • 専門家(カウンセラーや精神科医)が、患者さんの話をじっくりと傾聴し、共感することで、安心感を提供し、心理的な負担を軽減するものです。
    • 誰にも理解されないと感じがちな患者さんの心の支えとなり、孤立感を和らげます。
  4. マインドフルネス:
    • 現在の瞬間に意識を向け、身体の感覚や感情、思考を評価せずに受け入れる練習です。
    • 症状への過度な囚われや、それによる苦痛を軽減し、心身の回復力を高める効果が期待できます。
  5. リラクセーション法:
    • 心身の緊張を和らげることを目的とします。
    • 深呼吸(腹式呼吸)、漸進的筋弛緩法、自律訓練法などを学び、実践することで、ストレス反応を鎮め、身体の緊張を緩めます。

生活習慣の改善が身体表現性障害に与える影響

身体症状の背景には、自律神経の乱れや慢性的なストレスが関わっています。健康的な生活習慣は、自律神経のバランスを整え、心身の回復力を高める上で非常に重要です。

  • 規則正しい睡眠: 十分な睡眠は、脳と身体の疲労を回復させ、自律神経を整えます。寝る前のスマホを控える、寝室の環境を整えるなど、質の良い睡眠を心がけましょう。
  • バランスの取れた食事: 栄養バランスの取れた食事は、身体の基本的な機能を支え、心身の健康を維持します。特に腸内環境を整えることは、心身の健康にも影響すると言われています。
  • 適度な運動: ウォーキング、ヨガ、ストレッチなど、無理のない範囲での運動は、ストレス解消、血行促進、自律神経の調整に役立ちます。運動を通じて身体の感覚に意識を向け、リラックスすることも大切です。
  • ストレスマネジメント: ストレスの原因を特定し、解消法を見つけるだけでなく、ストレスに対する受け止め方を変える練習も重要です。

精神療法と生活習慣の改善は、薬物療法と組み合わせることで、より効果的に身体表現性障害の症状を改善し、持続的な回復を促します。心の状態を整え、健康的な生活を送ることは、あなたの体をいたわり、自信を取り戻すための大きな一歩となります。もし、「心のモヤモヤを解消したい」「自分らしい生活を取り戻したい」と感じているなら、どうぞ一人で抱え込まず、当院にご相談ください。私たちは、あなたが心身の調和を取り戻すお手伝いをいたします。

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