• 2025年7月8日
  • 2025年7月3日

記事6:うつ病と間違えられやすい病気~適切な診断の重要性~

「気分が落ち込んでいるのは、ただの五月病だと思っていた」「体がだるいのは、更年期のせいだと思っていた…」。うつ病の症状は、他の様々な精神疾患や身体疾患と似ているため、自己判断や誤った診断に繋がってしまう可能性があります。適切な治療を受けるためには、何よりも正確な診断が不可欠です。

うつ病と間違えられやすい主な病気としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 適応障害:
    • 特定のストレス要因(人間関係、仕事、環境の変化など)によって、うつ病に似た症状(気分の落ち込み、不安、不眠など)が現れます。ストレス要因がなくなると症状も改善することが多い点がうつ病と異なります。
  • 双極性障害(躁うつ病):
    • うつ状態の症状はうつ病と非常に似ていますが、双極性障害はうつ状態だけでなく、気分が高揚したり活動的になったりする躁状態(または軽躁状態)を繰り返すのが特徴です。躁状態を見逃すと、抗うつ薬の服用が躁転を引き起こすなど、治療方針が大きく変わるため、鑑別が非常に重要です。
  • 身体疾患:
    • 甲状腺機能低下症: 全身のだるさ、気分の落ち込み、集中力低下、体重増加、冷えなど、うつ病と似た症状が現れることがあります。血液検査で鑑別できます。
    • 貧血: 倦怠感、めまい、息切れなど。
    • 低血糖症: 倦怠感、気分の落ち込み、不安、集中力低下など。
    • 睡眠時無呼吸症候群: 日中の強い眠気、集中力低下、疲労感など。
    • 脳腫瘍や神経疾患(パーキンソン病など): 気分の落ち込みや認知機能の変化が、身体疾患の症状として現れることがあります。
    • 更年期障害: ホルモンバランスの変化により、気分の落ち込み、イライラ、不眠、倦怠感などの症状が現れます。
  • 強迫性障害:
    • 特定の考えにとらわれたり、特定の行動を繰り返さずにはいられなかったりする病気です。これによって強いストレスや気分の落ち込みが生じ、うつ病と誤解されることがあります。
  • アルコール依存症や薬物依存症:
    • アルコールの乱用や薬物の使用・離脱によって、うつ病に似た症状(気分の落ち込み、不眠、イライラなど)が現れることがあります。
  • 季節性感情障害:
    • 特定の季節(主に冬)に気分が落ち込むうつ病の一種です。季節によって症状が変化するのが特徴です。

これらの病気と症状が重複するため、自己判断せずに、必ず専門医の診察を受けることが不可欠です。

うつ病の診断には、患者さんの現在の症状、発症からの経過、生活背景、既往歴、家族歴、性格特性に関する詳細な問診が最も重要です。以下の点を詳しく伺い、総合的に判断します。

  • 症状の内容と持続期間: 気分の落ち込み、興味の喪失、睡眠、食欲、意欲、思考の変化など。
  • ストレス要因の有無: 心理的、社会的、身体的ストレス。
  • 過去の精神疾患の有無: 特に躁状態の経験がないか。
  • 身体疾患の有無: 身体検査や血液検査で、他の病気を除外する。
  • 薬の服用歴: うつ病に似た副作用を持つ薬がないか。
  • 飲酒・薬物の使用歴:

誤った診断のまま、単なるストレスだと放置してしまうと、隠れた重篤な身体疾患や精神疾患の発見が遅れたり、うつ病が進行してしまったりする可能性があります。当院では、心療内科の専門医として、患者さんの心身の状態を丁寧に伺い、正確な診断と適切な治療方針をご提案することで、患者さんが本来の健やかな生活を取り戻せるよう全力でサポートいたします。「もしかして」と感じたら、ためらわずに専門医にご相談ください。

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