• 2025年7月4日
  • 2025年7月3日

記事2:なぜアルコール依存症になる?原因は複雑:遺伝、環境、心理的要因の深い関係

「どうして自分だけ、こんなにお酒に依存してしまうんだろう?」「意志が弱いからこんなことになったのか…」。アルコール依存症に悩む患者さんやそのご家族からよく聞かれる疑問です。アルコール依存症は、その人の努力不足や性格の問題ではなく、複数の要因が複雑に絡み合って発症する病気です。原因を理解することは、病気と向き合い、適切な治療を行うための第一歩となります。

アルコール依存症の主な原因は、以下のように分類されます。

  1. 遺伝的要因(体質的要因):
    • アルコール依存症になりやすい体質(遺伝子)があることが研究で示唆されています。特定の遺伝子を持つ人は、アルコールを分解する能力が低かったり、アルコールによる快感を感じやすかったりすることがあります。
    • 家族にアルコール依存症の方がいる場合、発症リスクが高まることが知られています。ただし、遺伝だけで発症するわけではありません。
  2. 環境要因:
    • 飲酒習慣: 日常的に飲酒する機会が多い環境、職場の飲み会が多い、家族や友人との飲酒が習慣化しているなど、飲酒が身近にある環境は、飲酒量が増えやすく、依存症に繋がりやすくなります。
    • ストレス: 仕事や人間関係のストレス、家庭問題など、強いストレスが飲酒の引き金となり、飲酒量が増えることで依存症に発展することが多くあります。
    • 周囲の飲酒状況: 周囲に大酒飲みがいる場合、飲酒量が増えやすい傾向にあります。
    • 文化的な要因: アルコール摂取を是とする社会的な雰囲気や、アルコールの入手しやすさも影響します。
  3. 心理的・精神的要因:
    • ストレス対処法: ストレスを飲酒で解消しようとする習慣がある場合、依存症に繋がりやすくなります。
    • 精神疾患の併発: うつ病、不安障害、ADHD、双極性障害などの精神疾患を抱えている場合、その症状を和らげるために飲酒量が増え、アルコール依存症を併発することが多くあります(自己治療)。
    • 自己肯定感の低さ: 自分に自信がない、孤独感が強いなどの心理状態が、アルコールに頼る原因となることがあります。
    • 完璧主義・真面目な性格: 真面目で几帳面な性格の人が、ストレスを抱え込みやすく、飲酒に逃避してしまうケースもあります。
  4. アルコールの薬理作用:
    • アルコールは脳の報酬系に作用し、快感を生み出すことで、繰り返し飲酒したいという欲求を引き起こします。長期的な飲酒は脳に変化をもたらし、依存状態を形成します。

このように、アルコール依存症は、個人の意志の強さだけではどうにもならない、多因子が絡み合う複雑な病気です。ご自身の背景にある要因を理解することは、回復への重要な一歩となります。当院では、心療内科の専門医として、患者さんの飲酒に至る背景や心理状態を丁寧に伺い心身両面からのアプローチで回復を目指します。

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