- 2025年6月7日
- 2025年6月6日
2:なぜADHDになる?原因は複雑:生まれつきの特性、脳機能、環境要因の深い関係
「どうして自分は他の人みたいに集中できないんだろう?」「努力が足りないからだと責められるけど、どうしようもない…」。ADHDに悩む患者さんからよく聞かれる疑問です。ADHDは、その人の努力不足や性格の問題ではなく、生まれつきの脳機能の特性が原因であると考えられています。
ADHDの原因は一つではなく、複数の要因が複雑に絡み合って生じると考えられています。
- 脳機能の特性:
- 神経伝達物質の不均衡: 脳内の神経伝達物質(ドーパミンやノルアドレナリンなど)の働きに偏りがあることが指摘されています。これらの物質は、注意、集中、衝動性のコントロール、報酬系の機能に関わっています。
- 脳の特定の部位の機能異常: 注意力や実行機能(計画、優先順位付け、目標達成のための行動など)を司る前頭前野の機能が、定型発達の人と異なるパターンを示すことが研究で明らかになっています。
- 脳の構造の違い: 脳の特定の領域の体積や活動性において、わずかな違いが見られることも報告されています。
- 遺伝的要因:
- ADHDは遺伝的な影響が非常に大きいことが知られています。両親のどちらかがADHDである場合、子どももADHDである可能性が高まります。ただし、必ず遺伝するわけではありません。複数の遺伝子が複雑に影響し合って発症すると考えられています。
- 環境要因(発症に関与する可能性):
- 周産期の要因: 低出生体重、早産、周産期の合併症(妊娠中の喫煙や飲酒、薬物の影響など)が、ADHDの発症リスクを高める可能性が指摘されています。
- 鉛などの有害物質: 幼少期の鉛曝露がADHDの症状と関連する可能性が示唆されています。
- 心理社会的要因: 虐待、ネグレクト、貧困などの不適切な養育環境は、ADHDの症状を悪化させたり、他の精神疾患を併発させたりするリスクを高めますが、ADHD自体の直接的な原因ではありません。
このように、ADHDは生まれつきの脳の特性に起因するものであり、その人の努力不足や性格の問題ではありません。環境要因が影響を与える可能性はありますが、根本原因は脳の機能にあります。
ADHDの診断は、これらの脳の特性や行動パターンを総合的に評価して行われます。当院では、心療内科の専門医として、患者さんの幼少期からの発達歴や現在の困りごとを丁寧に伺い、正確な診断と最適なサポート方針をご提案します。自身の特性を理解し、適切な支援を受けることで、日常生活や社会生活での困難を乗り越え、自分らしく生きることが可能になります。