- 2025年8月11日
- 2025年8月8日
記事4:食道アカラシアの治療法:薬物療法から手術まで、専門医の選択肢
食道アカラシアの治療は、食道と胃の境目にある下部食道括約筋の圧力を弱め、食べ物が通過しやすくすること、そして食道の蠕動運動の機能を補うことに主眼が置かれます。治療法はいくつかあり、患者さんの症状の重症度、年齢、全身状態などに応じて、専門医が最適な方法を選択します。
主な治療法としては、以下のようなものがあります。
- 薬物療法: 下部食道括約筋を緩める作用のある薬(硝酸薬やカルシウム拮抗薬など)が用いられます。しかし、効果は一時的で、副作用(頭痛、めまいなど)も出やすく、根本的な治療にはなりません。主に診断確定までの間や、他の治療が困難な場合に一時的に使用されます。
- 内視鏡的バルーン拡張術: 口から内視鏡を挿入し、食道の狭くなった部分(下部食道括約筋)にバルーンを入れて膨らませ、筋肉を物理的に引き伸ばして広げる治療法です。比較的簡便に行えますが、再狭窄することも多く、複数回の治療が必要になることがあります。
- 内視鏡的ボツリヌス毒素注入療法: 内視鏡で下部食道括約筋にボツリヌス毒素を直接注入し、筋肉を麻痺させて緩める治療法です。効果は一時的で、数ヶ月から1年程度しか持続しませんが、高齢者や手術が困難な患者さんに選択されることがあります。
- 経口内視鏡的筋層切開術(POEM:Peroral Endoscopic Myotomy): 口から内視鏡を挿入し、食道の粘膜の下からアプローチして、下部食道括約筋の筋肉層を切開する最新の内視鏡治療です。外科手術に近い効果が期待でき、身体への負担も比較的少ないため、近年広く行われるようになっています。
- 外科的筋層切開術(ヘルラー筋層切開術): 開腹手術や腹腔鏡手術で、直接下部食道括約筋の筋肉を切開する手術です。最も確実な効果が期待でき、再発率も低いとされています。ただし、胃食道逆流症を併発するリスクがあるため、同時に逆流防止術を行うこともあります。
これらの治療法は、それぞれメリットとデメリットがあります。当院では、心療内科の専門医として、患者さんの身体の状態だけでなく、治療に対する不安や心の状態にも寄り添いながら、消化器専門医と連携し、患者さんにとって最適な治療選択肢をご提案します。