• 2025年7月24日
  • 2025年7月22日

3. めまい、耳鳴りの専門家へ!メニエール病の正しい診断と検査プロセス

「メニエール病ってどうやって診断されるの?」「どんな検査をするの?」突然のめまいや耳鳴りに襲われ、メニエール病を疑っても、病院での診断プロセスが分からずに不安を感じる方は少なくありません。メニエール病は、その症状が他のめまいや難聴を引き起こす病気と似ているため、耳鼻咽喉科の専門医による正しい診断が不可欠です。この記事では、医師がどのようにメニエール病と診断していくのか、そのプロセスと主な検査方法について解説します。


診断の基本は「丁寧な問診」と「内耳機能の評価」

メニエール病の診断は、ご本人からの詳細な情報収集と、内耳の聴覚・平衡感覚機能を客観的に評価することから始まります。

  1. 詳細な問診: 医師は、患者さんから以下のような点を詳しくお伺いします。
    • めまいの症状: めまいの種類(回転性か、ふらつきか)、発作の頻度、持続時間、随伴症状(吐き気、嘔吐、冷や汗など)。
    • 耳の症状: 耳鳴りの有無、音の種類(低音性か高音性か)、耳閉感の有無、難聴の有無、聞こえ方の変化。
    • 症状の関連性: めまい、耳鳴り、難聴が同時に起こるか、発作の前に耳鳴りや耳閉感が強くなるかなど。
    • 誘因: ストレス、疲労、睡眠不足、気圧の変化など、症状が出やすい状況。
    • 既往歴と服用中の薬: 過去の病気や現在服用している薬によっては、症状に影響を与えることがあります。
    • 生活習慣: 睡眠、食生活、ストレス状況など。 これらの情報は、メニエール病の診断に非常に重要です。
  2. 聴力検査(純音聴力検査): 聴力低下の有無や程度、どの周波数(音の高さ)が聞こえにくいかを確認します。メニエール病では、特に低音域の感音難聴が見られることが多いです。発作のたびに変動があるかどうかも診断のポイントになります。
  3. 平衡機能検査: めまいが内耳の平衡感覚に由来するものかどうかを判断するために行われます。
    • 重心動揺検査: 患者さんに台の上に立ってもらい、体の揺れ(重心の動き)を測定します。内耳の機能が低下していると、体の揺れが大きくなる傾向があります。
    • 眼振(がんしん)検査: めまい発作中に現れる目の不随意な動き(眼振)を観察・記録します。眼振の種類や方向から、めまいの原因が内耳にあるのか、脳にあるのかを判断する手がかりになります。
    • 温度刺激検査(カロリックテスト): 外耳道に冷水や温水を入れることで、内耳の平衡器官を刺激し、人工的に眼振を誘発してその反応を観察します。左右の内耳機能の差を評価します。

補助的な検査:他の病気の除外と診断の確定

内リンパ水腫の有無や他の病気を除外するために、以下の検査が行われることもあります。

  1. 電気眼振図(ENG)/Videonystagmography (VNG): 眼振の動きを電気的に記録したり、ビデオで記録したりする検査で、より詳細に平衡機能の異常を評価します。
  2. 蝸電図(ECoG): 内耳のリンパ液の異常(内リンパ水腫)を直接的に評価できる検査です。蝸牛に電極を置いて、音に対する電気的な反応を測定します。メニエール病の確定診断に非常に有効な検査の一つです。
  3. 内耳造影MRI: 特殊な造影剤を静脈注射し、数時間後にMRIを撮影することで、内耳の内リンパ水腫の有無を画像で直接確認できる検査です。近年、メニエール病の診断の精度を高めるために用いられるようになってきています。
  4. 血液検査: 甲状腺機能異常や自己免疫疾患など、めまいや難聴の原因となる他の全身疾患を除外するために行われることがあります。
  5. 頭部MRI/CT: めまいや難聴の原因が脳の病気(脳腫瘍、脳梗塞など)ではないことを確認するために行われることがあります。特に、メニエール病の典型的な症状ではない場合や、脳神経症状(手足の麻痺、ろれつが回らないなど)がある場合に実施されます。

診断のポイントと他の病気との鑑別

メニエール病の診断は、これらの検査結果だけでなく、「回転性めまい、難聴、耳鳴り(または耳閉感)の3つの症状が同時に起こり、発作を繰り返す」という特徴が揃っていることが重要です。

特に、以下のような他の病気との鑑別が重要になります。

  • 突発性難聴: 突然の難聴が主で、めまいは伴わないか、伴っても軽度で持続時間が短い。発作の繰り返しは稀。
  • 良性発作性頭位めまい症: 頭を特定の方向に動かした時に短時間(数十秒~1分程度)のめまいが起こる。耳鳴りや難聴は伴わない。
  • 前庭神経炎: 強いめまいが数日間持続するが、難聴は伴わない。
  • 脳の病気(脳梗塞、脳腫瘍など): めまいだけでなく、手足の麻痺、ろれつが回らない、意識障害などの神経症状を伴う場合は緊急性が高い。

自己判断せずに、必ず耳鼻咽喉科の専門医による診断を受けることが大切です。当クリニックでは、患者さんの状態を詳細に評価し、必要に応じた検査を行いながら、メニエール病の正確な診断と、ご本人に最適な治療計画をご提案します。

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