• 2025年7月30日
  • 2025年7月22日

記事9.若年性アルツハイマー型認知症:症状、診断、家族のサポート

認知症は高齢者だけの病気ではありません。**65歳未満で発症する認知症を「若年性認知症」**と呼び、その中でもアルツハイマー型が最も多く見られます。働き盛りの世代に発症することが多いため、患者さんご本人だけでなく、そのご家族、特に幼い子どもを持つ家庭にとっては、経済的な問題や子育てへの影響など、高齢者の認知症とは異なる深刻な課題を抱えることになります。

若年性アルツハイマー型認知症の特徴と症状

基本的な症状は高齢者のアルツハイマー型認知症と同様に、記憶障害が中心です。しかし、若年性の場合、以下のような特徴が見られることがあります。

  • 進行が早い傾向: 高齢者に比べて、症状の進行が早いケースが多いと言われています。
  • 非典型的な症状: 記憶障害よりも先に、言葉が出にくい(失語)、手足が思うように動かない(失行)、計算ができない、あるいは怒りやすい、無気力になるなど、認知機能の特定の部分の障害や、行動・心理症状(BPSD)が目立つことがあります。これにより、うつ病や更年期障害などと誤診されることも少なくありません。
  • 社会生活への影響: 仕事ができなくなることで収入が途絶え、住宅ローンや子どもの教育費など、経済的な問題が深刻化します。役割の喪失によるストレスも大きく、ご本人の精神的負担も甚大です。

診断の難しさと重要性

若年性アルツハイマー型認知症の診断は、その症状の多様性や、高齢者認知症とは異なる発症年齢のため、非常に難しい場合があります。専門医による詳細な問診、神経心理学的検査、MRIやPETなどの画像検査に加えて、遺伝子検査(家族歴がある場合など)が診断の助けとなることもあります。

**早期診断は、適切な治療や支援を始める上で非常に重要です。**診断が遅れると、仕事や家庭生活への影響がさらに大きくなってしまう可能性があります。

家族への多角的なサポート

若年性アルツハイマー型認知症の患者さんを支えるご家族、特に配偶者は、介護と同時に家計の維持、子育てといった多重の負担を抱えることになります。

  • 経済的支援: 傷病手当金、障害年金、介護保険サービス、生活福祉資金貸付など、利用できる公的制度を早期に調べ、申請することが重要です。
  • 就労支援: 患者さんご本人が働き続けることが難しい場合でも、症状に応じた就労支援サービスや、就労を継続するためのサポートもあります。
  • 子育てへの配慮: 子どもたちは親の変化に戸惑い、精神的な負担を抱えることがあります。子どもへの病気の理解を促し、心のケアも必要です。
  • 相談できる場所: 地域包括支援センター、若年性認知症支援コーディネーター、NPO法人などが運営する家族会や当事者会に参加し、同じ立場の仲間と情報交換したり、悩みを共有したりする場を持つことが大きな支えとなります。

若年性アルツハイマー型認知症は、まだ社会的な認知度が十分とは言えません。しかし、適切な支援と理解があれば、患者さんご本人もご家族も、病気と共に自分らしい生活を再構築することは可能です。当クリニックでは、若年性認知症に関する専門的な知見と温かい心で、皆様のサポートに全力を尽くします。

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