- 2025年7月26日
- 2025年7月22日
記事5.アルツハイマー型認知症と向き合うご家族へ:介護のヒントと心構え
ご家族がアルツハイマー型認知症と診断された時、介護の不安や負担は計り知れません。先の見えない不安、コミュニケーションの難しさ、そしてご自身の時間や体力の限界に直面し、「一人で抱え込んでいる」と感じる介護者の方も多いのではないでしょうか。しかし、介護は一人でするものではありません。適切なヒントと心構え、そして周囲のサポートを得ることで、介護者も心身ともに健康でいられることが、結果として患者さんへのより良いケアにつながります。
コミュニケーションの工夫
認知症の方は、言葉の理解や記憶が難しくなります。そのため、**「否定しない」「責めない」「諭さない」**という3つの「ない」を意識したコミュニケーションが大切です。
- ゆっくり、はっきりと話す: 短い文章で、一度に多くの情報を与えないようにしましょう。
- 笑顔と穏やかな声: 優しい表情と声で話しかけることで、安心感を与えられます。
- 共感と傾聴: 事実と異なっていても、まずは相手の感情に寄り添い、「そうなんですね」「大変でしたね」と受け止めましょう。
- 非言語コミュニケーション: ジェスチャーやアイコンタクトも活用し、穏やかな表情を心がけましょう。
生活環境の工夫
患者さんが安心して過ごせる環境を整えることも重要です。
- 安全の確保: 転倒しやすいものを取り除く、危険な場所には鍵をかけるなど、事故防止に努めましょう。
- 分かりやすい表示: 部屋の用途や物の置き場所を分かりやすく表示することで、混乱を減らせます。
- 安心できる空間: 慣れ親しんだ家具や写真などを置き、落ち着ける空間を作りましょう。
介護サービスを積極的に利用する
介護は限界を決めずに頑張り続けると、心身の健康を損ねてしまいます。介護保険制度を積極的に活用しましょう。
- ケアマネジャー: 介護保険の申請から、患者さんの状態に合わせたケアプランの作成、各種サービスの調整まで行ってくれます。まずは地域包括支援センターに相談し、ケアマネジャーと連携を取りましょう。
- デイサービス: 日中、専門施設でレクリエーションや入浴、食事などのサービスを受けられます。患者さんの社会性維持と介護者の休息につながります。
- ショートステイ: 短期間の宿泊サービスで、介護者が用事や休息を取りたい時に利用できます。
- グループホーム: 認知症高齢者が共同生活を送る場で、専門スタッフの支援のもと、安定した生活を送れます。
介護者自身のセルフケア
介護者が倒れてしまっては元も子もありません。自分の心身の健康を一番に考えましょう。
- 休息を取る: 短時間でも良いので、介護から離れる時間を作りましょう。
- 相談できる場所を持つ: 家族会や介護者の会に参加し、同じ立場の仲間と悩みを分かち合うことで、精神的な支えとなります。
- 自分の趣味や時間を持つ: 介護とは関係ない活動に没頭する時間も大切です。
介護は長く続くマラソンのようなものです。一人で抱え込まず、利用できるサービスや人の力を借りて、共にこの道のりを歩んでいきましょう。当クリニックも、ご家族の心に寄り添い、具体的なアドバイスやサポートを提供してまいります。