• 2025年7月5日
  • 2025年7月3日

3. なぜ体に症状が出るの?身体表現性障害の原因と背景

「体がずっと痛いのに、病院では何も異常がないって言われる…」「どうして自分だけ、こんな原因不明の症状に悩まされるんだろう」。身体表現性障害(現:身体症状症)に苦しむ多くの方が、その原因について深く考え、困惑しています。この疾患は、単一の原因で発症するわけではなく、精神的・心理的要因と、脳の機能的な側面が複雑に絡み合って発症すると考えられています。

身体表現性障害(身体症状症)の主な原因と背景

  1. 精神的ストレスと心理的要因:
    • 慢性的なストレス: 仕事、人間関係、家庭環境、経済問題、介護など、日常生活における慢性的で過度なストレスは、心身に大きな負担をかけ、身体症状として現れることがあります。
    • 未解決の感情・抑圧された感情: 怒り、悲しみ、不安などの感情を言葉で表現することが苦手な場合、これらの感情が無意識のうちに身体症状に変換されて現れることがあります。いわゆる「ヒステリー」や「転換性障害」と関連する側面です。
    • トラウマ体験: 幼少期の虐待、いじめ、事故、災害など、**過去の心的外傷(トラウマ)**が、現在の身体症状として影響を及ぼしているケースも少なくありません。体は過去の経験を記憶していると言われます。
    • 完璧主義・自己犠牲的な性格: 責任感が強く、完璧を目指す性格や、他者を優先し自分を犠牲にしがちな性格の人は、知らず知らずのうちにストレスをため込みやすく、心身のバランスを崩しやすい傾向があります。
    • 健康への過度な心配: 些細な身体の変化にも過敏に反応し、常に「重い病気ではないか」という不安に囚われる傾向も、症状を悪化させる要因となります。
  2. 脳の機能的・生物学的要因:
    • 脳機能の異常: 脳内で感情や痛みを処理する部位(扁桃体、前帯状皮質など)の活動が過剰になったり、脳内の神経伝達物質(セロトニン、ノルアドレナリンなど)のバランスが乱れたりすることが、身体症状の発現に関与していると考えられています。
    • 自律神経の乱れ: ストレスや不安が続くと、自律神経(交感神経と副交感神経)のバランスが崩れ、交感神経が優位な状態が続きます。これにより、血管の収縮、筋肉の緊張、消化器系の働きへの影響など、様々な身体症状が引き起こされます。
    • 痛みの処理メカニズムの変化: 脳が痛みの信号を過剰に受け取ったり、痛みを抑制する機能が低下したりすることで、慢性的な痛みが続くことがあります。
    • 遺伝的要因: 身体表現性障害に特定の遺伝子が関与しているという明確なエビデンスはまだありませんが、家族歴がある場合に発症しやすい傾向があるという報告もあります。
  3. 幼少期の経験:
    • 幼い頃に病気がちだった経験や、家族に病気の人がいて、過度な心配を受けて育った経験などが、身体症状に過敏になったり、身体症状を通して関心を引こうとしたりする行動に繋がることがあります。

身体表現性障害は、決してあなたの「気の持ちよう」や「気のせい」が原因で発症するものではありません。心と身体、脳の複雑な相互作用によって生じる病気です。原因を知ることで、自分を責める気持ちが和らぎ、「これは自分のせいではない」と理解できるかもしれません。

もし、あなたが今、この原因のどれかに心当たりがあり、苦しんでいるなら、一人で抱え込まずに当院にご相談ください。私たちは、あなたの背景に寄り添い、共に回復への道を探ります。

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