- 2025年7月3日
1. 「体の不調、でも検査で異常なし?」身体表現性障害とは
「頭が痛い、お腹がずっと痛い、体がだるくて仕方がない…。でも、病院で検査をしても『どこも悪くない』と言われる」。もしあなたが、このような経験を繰り返しているなら、それは「身体表現性障害」かもしれません。
身体表現性障害は、身体に様々な不調があるにもかかわらず、医学的な検査や診察ではその症状を説明できるような異常が見つからない、あるいは身体所見だけで症状の重症度や苦痛の程度を説明できない精神疾患の一つです。「気のせい」ではありません。あなたの体の不調は、確かに存在しているのです。
身体表現性障害(身体症状症)とは?
以前は「身体表現性障害」という名称が使われていましたが、現在はDSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)という国際的な診断基準では「身体症状症(Somatic Symptom Disorder)」という名称に変わっています。これは、診断の焦点が「精神的な原因による身体症状」から「身体症状そのものと、それに伴う苦痛、思考、感情、行動」へとシフトしたためです。
主な特徴は以下の通りです。
- 多様で慢性的な身体症状: 痛み(頭痛、腰痛、関節痛など)、消化器症状(吐き気、腹痛、下痢、便秘など)、神経症状(しびれ、めまい、麻痺など)、疲労感、だるさ、動悸、呼吸困難など、身体の様々な部位に症状が現れます。
- 医学的説明が困難: 身体症状を説明できるような明確な身体疾患や検査異常が見つからない、または症状の重症度や苦痛の程度が医学的所見から予想される以上に大きい。
- 症状への過度な囚われ: 症状そのものや、それによって引き起こされる可能性のある結果について、過剰な思考、感情、行動が伴います。例えば、健康への過度な心配、症状ばかり考えてしまう、頻繁な受診行動など。
- 苦痛や日常生活への影響: 身体症状やそれに関連する思考・感情・行動によって、日常生活(仕事、学業、社会生活など)に著しい苦痛や機能障害が生じています。
身体疾患との鑑別
身体表現性障害(身体症状症)の診断は、他の身体疾患を慎重に除外した上で行われます。
- 検査の重要性: まずは内科や外科などの医療機関で、身体症状の原因となる病気がないかを徹底的に検査することが重要です。
- 「異常なし」のその先: もし検査で異常が見つからなくても、それは「気のせい」ではありません。身体表現性障害(身体症状症)の可能性を視野に入れ、心療内科や精神科での専門的な診察が必要になります。
患者さん自身は、自分の身体症状が「精神的なもの」だとはなかなか受け入れられないものです。しかし、精神的なストレスや心理的な要因が、実際に身体に症状として現れることは珍しいことではありません。
もしあなたが、体の不調に悩み、様々な病院を巡っても原因が分からない状況が続いているなら、どうぞ一人で抱え込まず、当院にご相談ください。私たちは、あなたの「見えない苦しみ」に真摯に寄り添い、共に解決の道を歩んでいきます。