- 2025年7月4日
- 2025年7月3日
記事2:なぜうつ病になる?原因は多様:ストレス、遺伝、脳機能、性格の深い関係
「どうして自分だけ、こんなに気分が落ち込んでしまうんだろう?」「頑張っても頑張っても、報われない…」。うつ病に悩む患者さんやそのご家族からよく聞かれる疑問です。うつ病は、その人の努力不足や性格の問題ではなく、複数の要因が複雑に絡み合って発症する病気です。原因を理解することは、病気と向き合い、適切な治療を行うための第一歩となります。
うつ病の主な原因は、以下のように分類されます。
- 心理的・社会的ストレス要因:
- 環境の変化: 引っ越し、転職、異動、結婚、出産、子育て、子どもの独立、介護など、ライフイベントの変化はストレスとなり得ます。
- 人間関係の悩み: 職場の人間関係、家族との不和、友人とのトラブル、大切な人との別れなど。
- 喪失体験: 親しい人の死、ペットとの別れ、失業、大切なものを失うなど。
- 経済的問題: 借金、失業など、経済的な困難は大きなストレス源となります。
- 過労: 長時間労働や十分な休息が取れない状態は、心身に大きな負担をかけます。
- 慢性的なストレス: 解決しないストレスが長く続くことで、心身が疲弊し、うつ病の発症に繋がります。
- 生物学的要因(脳機能の特性):
- 神経伝達物質の不均衡: 脳内の神経伝達物質(セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンなど)の働きに偏りがあることが指摘されています。これらの物質は、気分、意欲、睡眠、食欲などに関わっています。
- 脳の構造や機能の変化: 脳の特定の部位(扁桃体、海馬など)の機能や、神経回路のネットワークに変化が見られることも研究で明らかになっています。
- 遺伝的要因: 家族にうつ病の人がいる場合、発症リスクが若干高まることが知られています。ただし、遺伝だけで発症するわけではなく、複数の遺伝子が複雑に影響し合って発症すると考えられています。
- 性格的要因・素因:
- 真面目、几帳面、責任感が強い: 頑張りすぎてしまう傾向があり、ストレスを抱え込みやすい。
- 完璧主義: 些細な失敗も許せず、自分を追い詰めてしまう。
- 協調性が高い、他者評価を気にする: 周囲の期待に応えようとしすぎて、自分を犠牲にしてしまう。
- 融通が利かない、考え方が偏りがち: ストレス対処法が限定的で、状況変化に適応しにくい。
- 自己肯定感が低い: 自分に自信がなく、ネガティブな感情を抱きやすい。
このように、うつ病は、個人の意志の強さだけではどうにもならない、多因子が絡み合う複雑な病気です。ご自身の背景にある要因を理解することは、病気と向き合い、適切な治療を行うための重要な一歩となります。当院では、心療内科の専門医として、患者さんのストレスの状況、生活背景、幼少期からの経験、性格特性などを丁寧に伺い、正確な診断と最適な治療方針をご提案します。心身両面からのアプローチで回復を目指します。