• 2025年6月29日
  • 2025年6月10日

28.【症例解説】高齢者の喪失体験とサトワタッチケアによる現実への回帰


高齢期になると、身近な人との別れ、身体機能の低下、環境の変化など、避けられない喪失体験に直面する機会が増えます。これらの喪失は、深い悲しみ、不安、孤独感といった精神的な苦痛だけでなく、身体的な不調(食欲不振、不眠など)や、時には意識の混濁、幻覚、妄想といった「せん妄」のような精神症状を引き起こすことがあります。高齢者の心身はデリケートであり、これらの喪失体験は、その後の生活の質を大きく左右する要因となります。サトワタッチケアは、高齢者が抱えるこのような喪失体験に対し、非常に有効なアプローチとなります。言葉での表現が難しい場合や、混乱している状態であっても、治療者の温かい手が身体に触れることで、患者さんは深い安心感に包まれます。この非言語的な安心感は、神経系を落ち着かせ、興奮状態にある脳をリラックスさせます。身体がリラックスすることで、不安や恐怖が和らぎ、意識が現実へと引き戻されることを促します。また、サトワタッチケアは、患者さんの身体感覚に焦点を当てることで、自己の存在を再認識させ、現実世界との繋がりを強化する助けとなります。例えば、過去の記憶に囚われがちな状態から、「いまここ」の自分を感じることで、混乱が収まり、穏やかな時間が増えていきます。この心の安定は、患者さんが喪失の悲しみを乗り越え、残された日々を穏やかに、そして尊厳を持って生きるための力を与えます。サトワタッチケアは、高齢者の心に寄り添い、彼らが人生の終盤においても、希望と安らぎを感じられるようサポートする、温かく、そして確かな手助けとなるでしょう。

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